大阪の“北朝鮮化”と米民主党VA州知事選敗退の行方をどう捉えるか。

2021年、日本の衆院選、大阪選挙区で維新の会がほぼ議席を独占し、むむむむむ、と思っていたら、アメリカでもヴァージニア州知事選で民主党が敗北。…まぁね。距離をおいて客観的に眺めれば、どちらも「当然の結果」ではあるのだが。。

まずは、アメリカの例のほうが納得しやすいかもしれない。

アメリカの例

コロナからの復帰に際し、消費に供給が追いつかない。物流は動かないし、政府の補助金が切れても、再就職は進まない。これまでの働き方を見直す時間が生まれたこともあっただろうが、実際にはコロナ以前の状態に一気に戻ったわけじゃないこともあるだろう(子どもの学校は開いても、放課後の課外活動がまだ再開されてない、など)。

コロナからの立ち直りには凸凹がある。まだまだ様子見が必要と考えるのは、個人の生活、国内のレヴェルだけにとどまらない。各国の「回復の凸凹」は、OPECが原油の増産を決めないことの理由にも挙げられていたが、その結果、目に見えて物価が高くなっている。

かくして経済政策が巧く噛み合ってない上に、アフガン撤退の大失態もあり、バイデン政権は公約に反し、T政権の外交政策を(気候変動問題以外)おおむね踏襲(対中、対イランなど)、むしろさらに強化していく流れにあることも歴然としてきた。

とどめに僅差の与党となった民主党内での、延々と続く果てしない政争がある。もはや“世界一権力のある男”とも呼ばれた保守派議員一人の反対に始まり、バイデン公約の経済大再建政策はどんどん縮小、未だに予算は通っていない(11/05午前現在)。

一体何をやってるんだ、という話である。ここまで悪い要素が重なって、勝てるほうがどうかしてる。いくらT元統領を恥じ、insurrection(議会襲撃)問題をゆゆしきと捉える有権者は少なからぬ、とはいえ。

その点、共和党知事候補のさじ加減、T元統領支持者にもT元統領はさすがに破廉恥、と考える有権者にも支持させる戦略が図に当たった、ともいえる。
コロナのロックダウン終了に伴い一気に悪化した治安の問題もまた、
BLM(ブラック・ライヴズ・マター)や学校のcritical race theory教育の問題で、既得権益を脅かされているとの危機意識、被害者意識を募らせる白人層に、当然のように影響しただろう。

critical race theoryの問題は、遂にアメリカでも日本の“自虐史観”論争に相当する問題が出てきた、と考えれば、日本からは要・注目)

アメリカは、このままではT元統領再選、
T統領時代が再び戻ってくる可能性が高まっている。
バイデンは“America is back”といったが、その際、各国の抱いた「確かに米は戻ってきたかもしれない。でも、いつまで??」との懸念が現実化しつつある。

大阪の例

さて、問題は大阪である(笑)しかしこれも、結果論なら、当然、というべき結果でしかない。

まず、維新に入れているのは、もともと自民寄りの浮動層だろう。それが今回のパンデミック下の不安や不満で、一気にポピュリスト党に流れ込んだ。だいたい自民はこれまであまりにも「お願いします、一生懸命頑張ります」以外、一切のロジックがなかった。そこに、少しでも理屈をいえば、もしそれが中学生並みの理屈であっても、はっきりそっちが賢そうに見える。

中学生並み、といったって、それが“学級委員並み”の理屈なら、ますますいかにも賢そうだし、しかも万人に理解もされる。

難しい理屈は要らない、むしろ煙たがられる。ぱっと聞いてぱっと判る、判りやすい理屈が一番“賢そう”なのだ。

例えば「無駄を省く」。
もちろんそれが悪いわけではない。しかし問題は「何を省くか」で、
つまり、何を「無駄」と考えるか、だ。

大阪は、コロナの死者が、感染者に対する割合で、東京の3倍近い時期もあった。「大阪でやってることを全国で」やられたら、今頃日本のコロナ死者は2倍以上に膨らんだでいたかもしれない。

その大阪の死者の比率の高さについて、選挙戦で何ら反省も総括もしようとしない。ただ自分たちがいかにもいいことをしているかのような話ばかり。そんな現実を見ないで幻想に生きているような、批判精神0では、とても政治は任せられない。

問題は、判りやすい簡単な理屈の“その先”にあることを、多くの有権者が考えるかどうか、だろう。

平成の頃だと思うが、「八紘一宇はいい考えではないか」と国会で質問した人がいたという話を聞いた。
もちろん「八紘一宇」それ自体は“いい考え”でもあるのかもしれない。
しかしその一見“いい考え”、
「八紘一宇」とか「無駄を省く」という“いい考え”の旗印のもとに、実際は、何をしてきたか、何がなされてきたか、という事実をこそ考えなければいけないだろう。

この辺も、アメリカの例がむしろよく判る。T元統領は庶民のための大統領だといった。治安を守り、警察の味方の大統領だ、ともいった。その言やよし。しかし実際には大企業を優遇する税制をとり、議会襲撃のお膳立てをした。何人もの警官があの日怪我をし、死に、そして後日自殺した。

ことばだけなら、政治家は、みんな“いいこと”をいう。

戦争だってそうだ。歴史上「我々は悪の国なので、不当に他国に攻め込んで、罪もない人々をめちゃくちゃに殺してやります!」といって戦争をした政府などないだろう。そこには常に、“いい考え”、“いいことば”が必ずあったはずだ。

そこを考えない限り、
つまり、“いい考え”、“いいことば”のその先に、実際、何が行われるか。
その“いいことば”の実際を、有権者が考えなければ、ファシズムも、ポピュリズムも止まらない。
民主主義は、ただのポピュラー・コンテストになり、人気のあるもの=“正義”、となってしまう。
それで、物事がうまくいく理由がない。
そう考えるのが、正常な精神だろう。

もちろん、この大阪維新の躍進問題の根本には、大阪の地盤沈下、つまり経済的な貧しさの問題がまずある。

住民サービスや医療・福祉を削って税金を浮かせてみても、本質的な市民の貧しさの解消にはなりはしない。あえていうまでもないことだろう。

しかし、政治不信と、そして粘り強く考える、思考力の“体力”のなさから、人は安易な“解決”を求めてしまう…。

ちょうど北朝鮮の独裁政権のミサイル開発みたいなものだ。
ミサイル開発も、国の豊かさに寄与しないことはいうまでもない。さらに独裁政権の維持という目的から見ても、まったくその場しのぎの、場当たり的な効果しか生まないだろう。

それでも北朝鮮にミサイル開発をやめさせることは難しい。同様に、大阪維新の躍進を止めることも、難しい。何か解決策はないものか…そんな想像することすらも難しい。このポピュリズムが、大阪から全国に転移しないかが心配だ。

しかし、諦めてはいけない(それもまた“安易な解決”のひとつだろう)。

ジョン・レノンは「想像しろ」といったが、U2のBonoはもはや「想像」してる場合じゃない、行動しろ、といっていた。

だがサイードもいう通り、もし「想像(イマジン)」しなければ、変化は決して起こらない。

よりよい未来を想像し、不平等や欺瞞や権力の腐敗に異議を唱え続ける人がいなければ、その次の行動も生まれるはずはないのだから。

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